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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

逆思考トレーニングがなぜ大事か

第229号 2010/1/22(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 受験勉強を経験してきた子どもたちを対象とした、幼小一貫「ひまわりクラブ」の1年間の授業総括として、数式を見て問題をつくる「作問」の重要性を前回のコラムでお伝えしました。計算トレーニングと文章題演習の橋渡しとして、この「作問」練習の重要性をテスト結果の分析を通して実証しましたが、こうした授業方法の改善を通して確かな学力を育てなくてはなりません。従来から言われてきた「計算はできるけれど、文章題になるとお手上げ」という学力の現状を打破する方策として、「国語の力を通して論理的思考力を育てる」という方針が文科省からも出されていますが、具体的実践方法になると、明確な答えが出ているわけではありません。国語力を高めることによって、文章を論理的に読みこなす力を高め、その結果として文章題解法の能力を高めるという方針に対しては、だれしも異論がない所ですが、さて具体的にどうするかとなると個々の能力に頼らざるを得ないのが現状です。そして相変わらず、計算トレーニングに集中させることが低学年の算数教育の課題のように言われています。しかし、「作問練習」の重要性を打ち出すことによって、低学年における計算至上主義の算数教育を改革していかなければなりません。「計算練習」が終わってから「文章題の練習」へという指導の流れを変え、「3×4」と「4×3」の違いがしっかりわかるような「考える計算」の実現が必要です。

「計算」から「文章題」への一方通行の指導を、双方向にすることによって起こる視点の変化が「論理」を育てる大事な教育法であることは、ピアジェが「可逆的思考をどう育てるか」で述べている通りです。視点を変えて物事の関係をつかませる、「逆思考」を重視する、といった、私たちが幼児期の基礎教育の中で実践している考え方は、小学生の算数における「作問」練習の重視と全く共通しています。長い順に系列化したら短い順にも並べる、こちらから見たら向こう側からもみる、「いくつ多い」を考えたら「いくつ少ない」も考える、出発点から到達点を考えたら、到達点から出発点を考えてみる・・・いろいろな場面で逆から問うチャンスはあります。こうしたちょっとした工夫で、子どもたちの思考を柔軟に育てることができると確信しています。

小学校入試の問題を分析していくと、難しいと思われる問題の多くがこの「可逆的な思考」を求めています。それは、小学校の教科学習に入ってからも変わりません。なぜなら、学力の根幹をなす大事な視点だからです。その逆思考を育てる発想を、算数授業にも応用することが大切です。計算練習と文章題練習をつなぐ橋渡しとして「作問練習」を重視し、形式(計算式)と具体(文章内容)を相互交流させ、「数式」の持つ意味を常に考えさせることによって、文章題解決の確かな視点が形成されていくはずです。

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