ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

幼児期の基礎教育としての入試対策を

第227号 2010/1/8(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 昨年行われた各学校の入試問題を見ても、振り落すための難問奇問を出している学校はどこにもありません。ひとつひとつの問題が相当工夫され、教科学習を支える学力の基礎がどこまで身についているかを見ようとする、良い問題ばかりです。これから受験する皆さんはこの現実をまずしっかり押さえておくことが必要です。なぜかと言えば、「まともな幼児教育」とは言えない誤った受験対策が頻繁に行われているからです。まず、入試の現実を知ること。ここからスタートしないと、小学校入試向けの準備教育が特別な訓練を必要とする「特殊な教育」だと誤解されていく危険性があるからです。ある学校の志願者向けパンフに「子育ての総決算としての入試を」と書かれているように、小学校入試にはテレビドラマで印象づけられているような「特殊な訓練」による知識が必要なのではなく、「まともな幼児教育」による、自ら考え問題を解決していく能力が求められているのです。そもそも、教科書のない受験であること、入試に関する情報が学校側から開示されていないこと・・・そこに間違った受験対策がはびこる大きな原因があるのです。そしてまた、行動観察重視に象徴されるように、学力だけで合否が決まらない入試であること、また、一部の学校では関係者有利の合否判定がなされるなど、小学校入試が他の入試と違った特殊な面を持っていることが、間違った入試対策が行われていく最大の理由です。

莫大な時間とお金を投資する以上、将来にとって意味のある教育であってほしいし、入試が終わったら何も残らない教育ではいけないと思います。それだけでなく、勉強嫌いな子をつくったり、自信をなくし、人格までもゆがめられていくような間違った入試対策では、「何のための受験か」ということになりかねません。合格さえすればどんな方法も許される、といった間違った考え方を捨て、幼児期の基礎教育を行う最大のチャンスとして、小学校入試を受け止めてください。知育を極端に嫌う日本の幼稚園や保育園も少しずつ変わってきているように思いますが、まだまだ意図的な知育が入りこむ余地は少ないように思います。しかし、日本の子どもたちの学力を再構築するためには、幼児教育のあり方を真剣に考え、改善しなくてはなりません。幼児期における「遊び」の大事さを認めつつ、しかし、遊びだけでは「思考力」は育たないということも知っておかなくてはなりません。幼児期に受験勉強はなじまないかもしれませんが、私は37年間受験指導の現場にいて、「幼児期における知育の在り方」を変えるチャンスは「小学校入試」だと考えています。幼児期における「思考力の育成」の最大のチャンスがそこにあると考えているからです。

長い間の試行錯誤と変遷を経て、今の入試問題は極めてまともな内容になっています。振り落とすための難問奇問や、知識や解き方だけを教え込まれて解ける問題ではありません。自ら考え解いていく、思考力が求められる良い問題ばかりです。だからこそ、合格を勝ち取るために取るべき学習法は、系統的な指導内容を準備することと、ものへの働きかけを重視する事物教育であると確信しています。それが私たちの主張する「まともな幼児期の基礎教育」であるということです。

PAGE TOP