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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

幼小一貫思考力育成クラス 実践報告(4)

第218号 2009/10/16(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 夏休みをはさんで、8月から再開したひまわりクラブ「幼小一貫思考力育成クラス」の授業は第3期に入り、次のような内容で授業を進めてきました。

ひまわりクラブ 第3期授業内容
第1回 繰り上がり・繰り下がりのない2桁・3桁の計算
第2回 繰り上がりのある2桁・3桁の計算
第3回 繰り下がりのある2桁・3桁の計算
第4回 2桁・3桁の計算を必要とする文章題
第5回 時計に関する問題
第6回 表とグラフ
第7回 かけ算とわり算の関係
第8回 複合文章題
第9回 長さの単位
第10回 第3期の総まとめ
※これは、現在小学校1年生の子どもたちを対象とした授業内容です。受験を終えた今年1月からスタートし、1期10回の授業を行い、現在第3期に入っています。

10月10日現在、第3期9回まで終了しています。この第3期は、かけ算・わり算の徹底と「繰り上がり・繰り下がりのある2桁~3桁の計算」を中心に、時計や表・グラフを読んだり書いたりする課題も取り入れながら、学習を進めてきました。これまでの学習においてみられた子どもたちの学力の現状をまずお伝えしましょう。

  1. 計算については、3年生までに学ぶ、たし算・ひき算・かけ算・わり算の基礎はしっかり身についてきた。たし算・ひき算は、3桁の繰り上がり・繰り下がりのある計算まで終了し、かけ算九九の暗唱はどの段も10秒以内で言えるようになった。ただ、計算スピードについては個人差が大きく、これからの課題である。

  2. 特に課題であったわり算の計算も、かけ算の逆算としてとらえることができるようになり、全体としてわり算の計算スピードは上がっている。

  3. 文章題や作問を通して、思考過程を「式」に置き換える「立式」を重視してきた。第2期までは、かけ算の考え方や、わり算とかけ算の違いなどの理解が不十分であった子が、第3期の文章題中心の学習を通してだいぶ理解が進んだように思う。

  4. これまで扱った学習内容で一番苦労したのは、時計の理解を踏まえた「時間と時刻」の計算問題であった。生活の中であまり関心がなく、考えたこともない問題は、まだ学習課題として取り上げるには多少の無理があるように思われる。時間を求める計算等はいずれ再挑戦することになるが、この事実は、私たちに低学年の子どもたちを指導する場合の原則を教えてくれている。つまり、生活に根ざさない課題は、どんなに教え込んでもその理解は定着しないということだ。

受験を終えた子どもたちが、受験対策として学習してきた「教科前基礎教育」の内容を踏まえ、小学校で学ぶ算数の理解がどこまで進むのか、どのように理解していけるのかを課題に学習を続けてきました。論理数学的思考力をより高めるために、文章題指導を中心にこれまで30回近い授業を積み上げてきました。教科書の指導内容を念頭に置きつつも、指導手順は全く独自の方法で行ってきました。独自の方法というのは、以下のようなことを大切にした授業ということです。

  1. すべての内容を子どもたちの生活に結びつける
  2. 幼児期に学習した内容に一度戻り、そこにつなげて指導し、理解力を積み上げる
  3. 計算ができればよいのではなく、その計算を自分で使えるようにするために、「立式」練習や「作問」練習を重視する
  4. 個人の理解力に応じた課題の取り組みを前提にしつつも、すべての課題を個人の能力に頼るのではなく、「集団授業」の良さをもう一度復活させるために、文章問題の読み合わせや「板書」を通して、解き方を自分の言葉で説明させるような方法を重視する。また、違った解き方をした場合、子ども同士の意見交換を活発にさせる。こうしたことを通して、今はやりの「個別指導」に対し、みんなで考え意見を述べ合う「集団授業」の良さを子ども自身にも経験させる

その結果、小1の10月現在、次のような文章題も自分で立式し、解いていくだけの力が身についてきました。

幼小一貫教育の在り方を模索しながら、年長の1月から小1の10月まで、手作りの授業を30回ほど行ってきました。子どもたちの理解力を検証しながら、まったく新しい発想で独自の教材を毎回8~10枚ずつ用意し、すでに300枚近いペーパー教材を作りました。この授業経験を踏まえ、新しい算数指導の方法が編み出せるのではないかとひそかに期待しています。そして、今はやりの計算重視の算数教育の中で抜け落ちていく「考える力」の育成をどう果たしていくのか・・・私の授業に参加している子どもたちとともに、一歩一歩前進していきたいと思います。

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