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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

パターン化された願書・面接では合格できません

第212号 2009/9/4(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 9月に入り、受験生のご両親は願書の用意、面接の準備等で忙しい毎日だと思います。家庭学習の時間も十分とれず、お母さんの対応に変化が出るため、毎年この時期になると精神的に不安定になる子どもが増えてきます。これまでの生活を大きく変化させないよう、家庭学習の時間はしっかり確保し、願書書きや面接準備で子どもと向かい合う時間を削減しないようお願いします。

最近は合否判定における願書や面接の比重が大きくなったと言われています。外部の人間にはそれが本当かどうか確たる証拠はありませんが、そう感じさせる状況があるのも事実です。

  1. 定員割れを起こしたり、潰れていく大学がある中で、学校側は定員割れを起こさないよう、合格を出した子が本当に入学してくれるのかどうか、敏感にならざるを得ない。
  2. そのために学校側は、受験者が第1志望か、第2・第3志望かを見極める方法を相当考えているはずだ。
  3. 家庭の協力があって、初めて成り立つ低学年の学校運営である以上、家庭の教育方針や、学校に対する要求を学校側がしっかり押さえておく必要がある。特に志望動機が上級校への受験を意識したものであるとすると、家庭の学校に対する要望が強くなりすぎ、学校運営上好ましいものではない。小1プロブレムに象徴される子どもの態度面だけでなく、親の態度面も合否に相当影響するだろうということは容易に想像できる。

子どもの学力だけで合否が決まらない小学校入試の一面が、こうした点にも表れています。そのために、準備する側も「願書添削」であったり、「模擬面接」であったり、いろいろな対策を講じていますが、その願書添削や模擬面接が学校側の意図に沿って正しく行われているかというと、見聞きする限り、現状は多くの問題点を抱えているように思います。

それは、「願書はこう書きなさい・こう書くべきだ」「面接の受け答えはこうしなさい・こうすべきだ」といった指導が行われ、家庭らしさを一番発揮できるはずの願書や面接で同じような書き方、同じような受け答えが目立っているということです。つまりパターン化された願書や面接での受け答えが年々目立ち始めているということです。たぶん、幼稚園や塾で指導されたか、あるいは面接本等をたくさん読み、「こう書かなくてはいけない」「こう応えなくてはいけない」と考えているご家庭が増えているのかもしれません。でもここではっきり言いましょう。それでは合格できません。学校側が知りたいのは、それぞれのご家庭の考え方であって、こう書けばA、こう答えればBという答えの内容に優劣をつけているわけではありません。そしてもう一つ、パターン化された願書は読む側からすると一目瞭然ですし、パターン化された受け答えは、聞く方からすれば借りものであることはすぐにわかってしまいます。

立派な願書は美辞麗句を並べた願書ではなく、行間に家庭の考え方、家庭の学校に対する想いが読み取れるような願書です。また、面接では拙い言い回しであっても、また、とぎれとぎれの答えでも、質問に対する家庭のしっかりした考え方、その学校で学びたい強い気持ちが伝わればそれで良いのです。

先日、ある授業で面接練習をしました。

「お名前を言ってください」「私の名前は、鈴木太郎です」
「お父さんのお仕事は何ですか」「私のお父さんのお仕事はお医者さんです」

普通の会話であれば、わざわざ「私の名前は・・」とか「私のお父さんのお仕事は・・」と言わなくても、「鈴木太郎です」「お医者さんです(病院のお仕事です)」でいいわけです。
これは明らかに訓練された言い回しで、聞く側にしてみれば奇異に映ります。後でその子に聞いてみると、幼稚園の先生にそう言いなさいと言われたとか、塾の先生に教わったとか、必ずパターンで指導された結果の言い回しであることが判明します。これが「対策」の現状ですから困ったものです。それぞれのご家庭の考えで行っている自然な対応の仕方を「面接練習」で壊されてしまう。これが実態ですから、気をつけなければなりません。また、願書においても、学校側が要求している項目に正面から答えず、すべてを「家庭の教育方針」で済ませてしまうような書き方が目立つため、その原因を調べてみると、幼稚園や塾での指導があったということのようです。

前述したように、願書や面接はこう書けば良い、こう答えれば良いというものでなく、願書や面接を通してそれぞれのご家庭の考え方や子どもに対する想い、学校に対する想いを伝えるべきです。パターン化した受け答えでは、内容よりも教え込まれたという面が目立ち、非常にマイナスだと思います。学校側がなぜ自由遊びを重視し始めているのか。また、質問事項を何項目か並べて質問するのではなく、答えた内容に関してまた質問してくる・・・といったように、項目ごとに答えを求めるインタビューではなく、会話形式で進む面接がなぜとられているのか・・・それを考えれば、パターン化した願書や面接での受け答えが、学校側の要求と正反対の方向を向いているということは一目瞭然です。

願書の内容や面接での受け答えについて脚本を書くのはご両親です。他人任せの対応は学校側にすぐに見破られてしまいます。百通もの願書を読めば、どれがオリジナルでどれがものまねかすぐにわかります。また、何十人もの人たちと面接すれば、自分で考えた答えか、教え込まれた答えなのか、すぐにわかります。パターン化された願書や面接での受け答えでは合格できないことを肝に銘じて、これから始まる願書の準備に家庭の考え方がしっかり反映できるよう、全力を注いでください。

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