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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

夏の学習課題

第201号 2009/6/12(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 過去10年間の出題傾向を踏まえた夏からの学習対策の在り方をお伝えする「学校別母親セミナー」を6月9日から開始しました。学校別担当者が入試傾向の分析と子どもたちの学力の現状を踏まえ、これからの学習課題を伝えるセミナーです。7月10日まで私立・国立合わせて23校の分析をする予定です。特に、秋の受験にとって最大の山場である夏休みの有効な学習法を具体的に伝えることが一番の目的です。初日の雙葉小学校のセミナーには、会員だけでなく一般の皆さまにも大勢参加していただきました。

過去10年間の出題傾向を、基本となる5つの領域に分け一覧表を作ってみると、その学校の傾向がはっきりしてきます。同じ問題が毎年続くことはありませんが、同じ趣旨の問題が何年かおきに出されていることもはっきりわかります。また、違った領域の問題が「思考力」の面で深く絡み合っていることもよくわかってきます。学校の方針が急に変わったり、合否判定の在り方によって問題の難易度が変わったりすることはよくあることですが、受験する学校の出題傾向をしっかりつかんだ対策が必要です。教科書のない受験だからこそ、学校側が何を意図して問題を出しているのかをつかむことは重要です。

ところで、問題を作成する学校側が出題の根拠にしているものは3つあります。

(1) 個別知能検査及び集団用知能テストの問題
(2) 小学校低学年の学習内容。特に算数における四則演算につながる内容
(3) 小学校高学年で学習する文章題において求められる思考法

この3つが学力面で求められる問題の根拠になっています。(1)の知能テストの問題を根拠とした問題はパターン化した練習で解決可能な問題です。また、(2)の小学校低学年の学習内容を根拠とした問題もある程度形になりやすい問題で、子どもたちもペーパーを見れば質問の意図が大体わかってしまうものですが、知能検査の問題ほどパターン化されてはいません。

ペーパー問題において思考力が要求される問題の多くは「旅人算」「植木算」「消去算」といったような、高学年で学ぶ文章題で求められる思考法が出題の根拠になっている場合が少なくありません。子どもの生活や遊びにテーマを求め、わかりやすい形で出題されています。そこでは、将来の学力の基礎となる「論理的思考力」が重視されています。ここを見抜かないと有効な対策は立てられません。どんな問題が出たかを調べるだけでなく、その問題が求めている「思考法」を分析し、トレーニングの対象にしなければいけません。過去問トレーニングは過去に出された同じ問題を学習するだけでなく、そこで求められている思考法をいろいろなテーマで繰り返し練習することが大事です。たくさんのペーパーをこなすことに力を注ぐのではなく、1枚のペーパーを深く理解する学習を心がけることがこの夏休みの課題です。そのためには、子どもが物事をどのように理解していくのか、その道筋をしっかりつかみ、どこでつまづいているのかを見極める冷静さを持たないといけません。

「間違いには必ず原因がある」ということを指導者が理解せず、量を多くこなすことだけを目指す学習法では子どもは確実につぶされていきます。何の脈絡もなく、ただ「入試に出たから・・・」という理由で行う「量をこなす学習」だけは絶対に避けてください。これから入試に向けての「学習の舵取り」が合否を左右すると言っても過言ではありません。その意味で、家庭学習における保護者の役割は大事です。特に、限られた時間の中での学習ですから、子どもの学力の現状を踏まえた「問題を選択する作業」「良問を抜き取る作業」が保護者には求められます。特にご両親が仕事を持っているご家庭では切実な課題といえます。

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