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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

残り半年間の学習対策

第198号 2009/5/22(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 秋の受験まで残すところ半年足らずとなりました。受験控えた多くのご家庭で、第1志望校をどうするか。また、併願校をどうするか。そのために、どのような学習対策を取るのが効果的か・・・など、志望校に対する学習の進め方で悩みを抱えていることを教育相談等を通して感じています。これまでの学習がどこまで進んできたのか。その結果はたして基礎学力が身についているのか。それを踏まえて、応用学習・過去問対策・難問対策をどうするかなど、悩みは尽きません。小学校受験のための効果的な教科書がない現在、学習法に混乱が生じるのは当然といえば当然です。その一番の原因が、子どもの発達や理解の道筋を無視し、ともかく過去問を早い時期からやれば良いという、間違った指導法がまかり通っていることです。それを家庭ではなく「塾」でやっているとなると根が深いと言わざるを得ません。

最近は、最初からペーパーで・・というところは少なくなりました。私たちが25年以上かけて主張してきた「事物教育」の意味がやっと受験対策の現場でも理解されてきた・・・という想いですが、しかし、まだまだペーパー主義の指導が多く、既に無理な学習を強要され壁にぶつかりつぶされている子どもたちが相当いることも事実です。そうしたご家庭の教育相談が増え、この時期になっても転塾してくる子どもたちが目立ちます。

情報も開示されず、教科書もない小学校受験は、他の受験と違って目標が明確でない分、混乱が生じやすいことは事実です。家庭学習をする場合も、授業進度に沿ってフォローがなされていれば問題ありませんが、教室での学習とつながりを欠き、市販の問題集を買い込んで違った内容で進んでいくのはとても非効率であるし、子どもにとっても不幸です。教室での授業進度に沿って家庭学習が積み上げられていくのが一番望ましいのですが、そもそも過去問を何の脈絡もなく行い、教室の授業にカリキュラムがないような指導では「教室と家庭の連携」などできうるはずもありません。

幼児であればある程、基礎と応用を明確にし、基礎をしっかり固めた上で過去問や難問に取り組むべきです。基礎も何もないところに過去問ペーパーをたくさんやってきた子どもたちは、これから大きな壁にぶつかるはずです。それは、一度も見たことのない問題にぶつかったとき、自分の力で筋道立てて考えることができないからです。パターンで教え込まれ相当難しい問題を解く子も、視点が変わり、質問の内容が複雑になり、答えの根拠を求められるような課題になった場合、お手上げです。考える力・論理性は、ペーパーだけの学習では身に付かないことは多くの思考実験で明らかです。これからでも遅くありません。壁にぶつかったら基礎に戻る勇気を持ち、もう一度立て直しを図ってください。その際、大事なのは具体物やカード教材を使い、課題に対して試行錯誤して答えに導くことです。決して解き方を教え込まないこと。その上で、答えの根拠を説明させることです。そうした学習の過程で、どこまで理解し、どこからわからなくなっているのかが指導する大人にはよくわかります。そうしたら、その点を徹底してトレーニングするのです。間違いには必ず原因がある。それを指摘し、乗り越える学習をする、そのがんばりの中で、ひとつひとつ身に付いたものになっていくのです。教え込んでわかるほど、今の受験問題は単純ではありません。時間がかかっても、苦労し、自分の力で解けたという事実が大事なのです。

秋に受験する皆さんは、すでに基礎段階の学習を終えているはずです。これから夏休みまで、応用段階の学習に取り組み、夏休み前までにすべての課題を終了しておくことが大事です。そして、7月~8月の「夏休み」は、過去問・難問を中心に、学力アップのために少し背伸びさせることです。この少し・・・といったところが大事で、極端に難しい問題、手の届かないような問題をやっても意味はありません。一歩先の問題を与え続けることによって子どもの力は伸びていくのです。ですから、細かいことをいえば、ひとりひとりその一歩先の問題は違うのです。その道筋を分かって指導できるかどうか。この点が、舵取り役の保護者の腕の見せ所なのです。そのためには、どうしても学習の系統性を理解していなくてはなりません。それをこそ、教室の担任に質問してください。教室で学んだことを家でしっかりトレーニングする。そのシステムがしっかりできていることが大切です。私たちが家庭用教材を毎月配布し、ステップごとにチェックテストを行っているのはそうした理由によるものです。

今、全国の多くの皆さまがこぐま会の膨大な教材の中から、まず「ひとりでとっくん365日」を使って学習を始めています。こぐま会の教室での授業に連動し、系統だった1年間のカリキュラムに基づき、子どもの理解の道筋に合わせて作ったこの問題集が支持されているのも「学習の系統性」が大事であるという理解が深まってきた証拠ではないかと思います。これからの学習で壁にぶつかりスランプに陥りましたら、もう一度、積み上げてきた基礎学力を点検し、本当に分かっているのかどうかをあらゆる角度から確認してください。もしそこに不安があるのなら、基本に戻る勇気をぜひ持っていただきたいと思います。

これから半年間の学習は、
  1. ペーパートレーニングを今までよりは増やす必要があるが、量よりも質を重んじ、同じペーパーでも違った角度からいろいろ質問する。1枚のペーパーを大事にする発想で学習することが大切
  2. 難問に挑戦させ、まったく初めての問題も自分の力で解く訓練をする。その際、必ず答えの根拠を説明させる
  3. 問題がどのようにして難問化するか、その理由を分析し、その学校にあった難問化対策をしっかり取る
  4. 各学校の合否のポイントをしっかり押さえ、徹底した練習をする

というようなことが大事です。そのためにはどうしても過去問の分析をしっかりしておかなくてはなりません。正確な情報・正確な分析が必要なのはそうした理由からです。
そしてもうひとつ大事なことがあります。今通っている教室の方針を信じ、決して塾のかけもちをしないことです。せっかく積み上げてきた学力が指導法の違いで壊されることがあるからです。合格という頂上を目指す道はいくつあっても良いと思いますが、違う道を登ろうとしたら一番困るのは子ども自身です。合格を目指す学習方針を明確に持ち、今受けている指導を信じ、その方法を家庭学習で徹底することです。

「先生が教えてくれるやり方と、お母さんが言うことが違うし、別の教室の先生とも違うし・・・私困っちゃうの。どうしたら良いの?」・・・こうした場面に何度も出くわしました。こういうことが起こらないように、指導法は一本化し、それを徹底することでしか合格は見えてきません。多くの塾を掛け持ちすることでお母さんは安心するかもしれませんが、本当は子どもがいちばん困惑しているのです。毎年9月以降に起こるこうした不幸を繰り返さないよう、信じた道を着実に歩み続けてください。子どもにとってもそれが一番良いことだと思います。

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