ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

聞く力を育てることの大切さ

第194号 2009/4/17(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 幼児期における教科前基礎教育の内容を考える際、将来の算数科の土台となる「論理数学的思考」を育てるだけでなく、さまざまに分化していく教科の内容に即した経験を積ませなくてはなりません。特に算数科と同様、学力の基礎を形成する「国語科」の土台をどう育てるかは大変重要です。遠山啓氏が提言した国語の基礎となる「原国語」の内容を私たちは実践を通し、時間をかけてつくり上げてきました。そして、その内容を3つの柱にまとめて指導しています。
  1. 聞く力を育てる「話の内容理解」
  2. 話す力を育てる「お話づくり」
  3. 正しい日本語を身につけるための「言葉の学習」
日本の学校で行われる「国語科」の内容は学習指導要領によって決められ、「聞く力・話す力・読む力・書く力」の4つの柱で指導するよう指示されています。幼児期の発達の現状を考えると、聞く力と話す力をしっかり育成することが読む力や書く力の基礎となっていくのではないかと考え、上記のような方針を立てました。昔から言われている「読み・書き・計算」の「読み」や「書き」も当然必要ですが、その前に「聞く力」や「話す力」を育成することが大事だと考えています。

しかし、品川区の「幼小一貫教育」構想では、「ひらがなの読み書き」が最初に提案されるなど幼児の国語能力を文字の読み書きに置く発想は伝統的に強く、「聞く力」や「話す力」の育成が軽視されるのではないかと懸念しています。

ところで、小学校の入試問題を見る限り、小学校側がいちばん重視しているのは「聞く力」であることは間違いありません。話の内容理解を重視している今の入試問題は、学校側が教科学習を支える「レディネス」として「聞く力」を最重要視していることがよくわかります。すべて口頭で質問される入試の方法を見ても、「聞く力」の育成が入試対策の中心になることははっきりしています。

4月11日に行った「第3回幼小一貫教育を考える会」では、「原国語」をめぐって年齢の異なる実践現場から報告があり、国語の基礎を幼児期に育てる「原国語」の内容は、まず「聞く力」を重視すること、特にその中でも「絵本の読み・聞かせ」が、将来の国語力を育てる基礎であることは、参加者全員の一致した見解でした。算数の基礎を計算と考えたり、国語の基礎を文字の読み書きと考えたり、形を追い求める教育では「論理的思考力」は育たないということを幼児教育関係者はしっかり把握しておく必要があります。

PAGE TOP