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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

小学校では遅すぎる

第190号 2009/3/13(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 3月8日、仙台市民会館において「小学校では遅すぎる」(思考力を育てる幼児期の基礎教育と受験)と題した講演会を行いました。仙台に本拠を置く受験塾「プラウダス」が幼児教室「プラウダス×こぐま会」を立ち上げ、その開校記念講演会に招かれたものです。
昨年4月のある日、プラウダスの代表者から「仙台で幼児教室を開く意思があるので協力をお願いしたい」との申し出を受けました。いろいろお話を伺ってみると、幼児教室を開く決意をされたのは次のような理由からのようでした。

もともとプラウダスは、中学から大学にいたる受験を指導する塾として仙台で教育活動をしている塾です。首都圏のように小学校受験のための教育要求があるわけではなく、高学年になった子どもたちがある問題にぶつかり、理解できない原因を探っていくと、どうしても幼児期の教育まで降りていかざるを得ないというのです。つまり、幼児期にどんな教育を受けてきたかまでさかのぼって対策を考えないと解決できない問題が多いということのようです。逆に大変良く「国語」ができる子どもたちの背景を調査していくと、そこに必ず幼児期の「読み聞かせの体験」が絡んでいるのではないかということも発見されたようです。そうしたことを通して、幼児期の教育の大切さを実感されたようです。

そうした認識の下で、大学受験を目指す子どもたちを指導してきた教師が幼児期の教育に携わるという画期的な対策を打ち出し、それにふさわしいプログラムを探していたようです。仙台では3つの書店にこぐま会の教材を置かせてもらっていますが、そこで私たちが開発した教具や教材に触れ、「これだ」と思ったそうです。幼児期に思考力を育てるためにこれだけの学習ができるのか、そして、こんなに難しいことまでできるのかと眼を疑ったそうです。私たちの開発した教具教材と、中学受験や高校受験・大学受験を主に担当している教師が出会った瞬間です。
その後、話し合いを重ねていくうちに、教育に対する考え方を共有することができ、私の授業に参加し、研修を重ねながら、この2月から仙台で「プラウダス×こぐま会」の実践が始まりました。東京に戻って、小学校受験をしたいと考えている転勤族の方や中学受験を目指すご家庭が、しっかりとした考えに基づいた幼児期の基礎教育を受けさせたいと考え、教室に通ってきてくれているようでした。

私は「小学校では遅すぎる」と題した講演会で、次のようなことをお話ししました。

(1)幼稚園・保育園の教育に満足していますか
  • 同じスタートラインという幻想
  • 幼小一貫教育こそ急務
(2)幼児期における基礎教育の考え方
  • 教科前基礎教育の内容
  • 事物教育がなぜ大事か
  • 対話教育がなぜ必要か
(3)読み・書き・計算ではなく、思考力を育てる教育を
  • 日本の子どもたちの思考力低下はどうして起こったか
  • 考える力の育成は、幼児期から積み上げることが必要
  • 中学受験を目指す幼児のための基礎教育
(4)小学校受験と基礎教育
  • 首都圏における小学校受験の現状と問題点
  • どんな能力が求められているか

私も今年から、受験を終えた子どもたちを対象に、こぐま会の「考える力」を育てる教育を小学校で学ぶ学習内容に橋渡ししていく「ひまわりクラブ」を立ち上げ、幼小一貫教育の実現に新たな一歩を踏み出しました。今週で10回目の最後の授業になりますが、予定していたカリキュラムはすべて終え、少なくとも算数においては低学年で学ぶ四則演算の学習まで指導できたと確信しています。現在、日本で行われている幼児期の教育では最高レベルの教育が完成したと自負しています。

講演会終了後、プラウダス責任者の皆さんと昼食をともにしながら教育内容や教育方法について意見交換をしました。その際、大学受験まで指導しているI氏からは、実際に幼児を指導した経験から毎回が感動の連続だということをお聞きし、あらためて幼児期の教育の重要性を確認しました。中学受験だけでなく、高校・大学受験まで担当する教師が幼児教育を担当するという画期的な出来事に拍手を送りつつ、そうした経験の持ち主だからこそみえてくる幼児期の教育の大切さを、私たちもしっかり学んでいきたいと考えています。こうした子どものいる現場での論議が、やがて新しい教育プログラムとして実を結ぶ時が来ることを私は確信しています。

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