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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

幼小一貫教育こそ急務

第183号 2009/1/23(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 1月19日の夕刊は、横浜市で12年度から小学校346校と中学校145校の計491の全市立校で「小中一貫教育」を実施する方針を固めたことを報じています。すでに品川区では、現在54校で「小中一貫教育」を行っているようですが、全市的に行うのは横浜市が最初のようです。私立の一貫校についてはすでに実施されているところがあり、先生の相互交流も盛んにおこなわれ、教科の系統性を踏まえた指導、子どもたちにとって学びやすい指導が工夫されているようです。教育の継続性からいえば当然の措置でありながら、なぜ今、小中や中高の一貫教育が注目されているのでしょうか。裏返せば、それだけ日本の教育システムは「継続性」を無視して無駄な事をやってきたということです。その意味で子どもたちにとっても大変良い改革だと思いますが、その分、現場の先生方は「教科の系統性」という点で学ぶべきことがたくさん出てくるはずです。ですから準備段階の今、横浜市の学校では、小学校の先生が中学校に出向いて数学を教えたり、中学校の先生が小学校に出向いて英語の授業をしたりしているようです。そうした相互交流を通して、教師が子どもの成長に合わせた教科指導の見通しを持たなくてはこの制度改革は成功しません。ただ、そうした学習面だけでなく、9年間一緒に学べるから良いとか、その結果として中一の不登校が少なくなったとか・・・そうした点で支持されているということがテレビ報道などでは前面に出ていますが、学習過程の改革として小中一貫をしっかりとらえておかないと、改革の意味があいまいになり、「学習内容の構造化」という幹が太くならなくなってしまう危険があるように思います。

ところで「学びの継続性」という点を考えれば「幼小一貫教育」こそ急務だと思います。指導要領の改訂に伴い、幼稚園も保育園も小学校教育のつながりを考えた保育の促進がうたわれていますが、何をどう指導したら良いのか現場の先生方は相当困惑しているようです。教科書どころか指導内容の細かい指定もない状況で小学校教育との連携といっても、ピンとこないのが実情ではないかと思います。そもそも幼稚園や保育園の現場保育者がどこまで小学校教育の内容について把握しているか、大変疑問です。知育を毛嫌いしてきた流れからすれば、これまでの幼稚園や保育園は「小学校に行って、子どもたちはどこで壁にぶつかるのか」すらも把握していなかったと思います。自己完結型の教育で、「卒園させれば、あとは小学校にお任せ」といった状況が現実ではなかったかと思います。もしそうでなければ、「知育」を話題にした瞬間に拒絶反応を起こすような雰囲気はなかったはずです。しかし冷静に考えてみてください。6歳4月の入学で学びがスタートするわけではありません。幼児たちは遊びや生活の中で必要に応じて学んでいるのです。その学びをもっと組織化して、小学校の教科学習につなげていけば、学力の土台は今以上に強固になるはずです。

私たちが20年以上もかけて学習内容を完成させてきた「教科前基礎教育」の考え方を幼稚園や保育園でも実践していただくことが、日本の子どもたちの学力の土台をきちんと形成する方法だと考えています。「小中一貫教育」や「中高一貫教育」の実現の中で忘れがちな「幼小一貫教育」の必要性を、これからも声を大にして訴えていきたいと思います。

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