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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

年長の夏は飛躍の時

第105号 2007/06/08(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 6月に入り、秋の入試まで残すところ5ヶ月足らずとなりました。こぐま会の年長クラスである「ばらクラス」の授業も、基礎段階を終え、応用段階の学習に入っています。並行して行っている「学校別指定校クラス」も最後の段階である「ステップC」に入り、かなり難しい過去問の学習に入りました。

 指導する私たちにとって、この時期の授業が一番充実感を得られるものになっています。それは、これまでになく子どもたちに集中力が見られ、難しい課題への挑戦が可能になるからです。聞かれている事の理解が十分でなく、不安そうに答え、時には隣のお友だちの結果を見て答えようとしていた子どもたちが、自分で考え答えを導き出しています。基礎が身につき、自信がついてきたのでしょう。特に、数における暗算能力の発達については目を見張るものがあります。

 一方で、課題が難しくなった結果、学習することを拒絶する子も出始めているようです。ごく少数ですが、そうした相談も受けています。確かに例年基礎段階の学習を終えたこの時期に、そうした傾向が見られるものですが、そのほとんどが、学習内容の難しさに対する拒絶反応ではなく、できなかった時の悔しさや、出来具合をめぐって起こる母と子の緊張関係に原因があるようです。出来―不出来に敏感にならざるを得ないお母さんの気持ちも十分理解できますが、子どもの学習意欲を奪ってしまう言動は慎まなくてはなりません。

 子どもたちは本来難しいことに挑戦する意欲を持っています。また、一歩先の難しいことに挑戦することを通して、子どもたちは一段高いところへと引き上げられるのです。簡単に出来てしまう問題をやり続けても、教育効果は望めません。しかしだからといって、3歩も4歩も先の課題では、かえって意欲をなくす結果にもなりかねません。少し背伸びをすれば解決できる課題・・・それが一歩先の課題であり、その連続性において、結果として2歩も3歩も先の課題が解決可能になるのです。

 受験準備の最大の山場である夏休みを控え、今大事にしなくてはならないことは、「子どもの学習意欲」です。子どもの意欲を引き出すには、課題がやさし過ぎてもいけないし、難しすぎてもいけません。背伸びすれば届く課題に挑戦させることが大事です。子どもが学ぶ楽しさを感じるためには「わかった」という実感と「やればできる」という自信を持たせなくてはなりません。そのためには、学ぶ内容の系統性や学習方法の順序性をしっかりと踏まえた指導が必要です。何の系統性もなく、ただ入試に出たという理由だけで過去問をこなすような学習法では、力は蓄積できません。

 年長の夏は、いろいろな意味で飛躍の時です。単に学習面の成長だけでなく、社会性の発達や自立心の高まりによって、問題解決能力が格段に伸びていきます。この大事な時期に、子どもがさまざまな原因で、学習意欲をなくすようでは困ります。幼児期の基礎教育においては「褒めて育てる」ことを基本とした、子どもとの関係づくりが必要です。

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