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週刊こぐま通信
「小・中・高 現場教師が語る幼児教育の大切さ」

vol.57「算数オリンピック 2011 解答・解説」

2011年5月31日(火)
こぐま会小学部長 渋谷 充
 今週のコラムは、2011年5月22日(日)に行われた算数オリンピックトライアルの解答・略式解説の速報をお伝えいたします。(取り急ぎ略式解説をつけましたが、よりエレガントなものができれば随時発表していきます)

「こぐま会小学部」では、算数オリンピック特別講座(ジュニアやキッズBEEも開講)を開講しております。

[総評]
 問題の難易度は例年通りで、問題数も11問で昨年と同じ。数字や言語などを利用した論理問題が8問と図形問題が3問という構成も昨年と同じである。
いずれも秀逸な完成度で試行錯誤を惜しんでいては1問も解答できない。個人的に好きなのは【問題10】。この論理の中には、将来整数問題や中学受験でありがちな得票数の問題など、多くの生徒が苦手な単元の大切な要素がたくさん含まれている。適当に数字を組み合わせていたらできた生徒も、なぜその解答が正しいのか証明するぐらいの気持ちでこの問題にあたってほしいと思う。【問題3】はよくあるゲームに対する設問であるが、解答にいたるアルゴリズムは常に容易には構築できない。【問題8】と【問題11】は平面図形の問題。今年度は合同と相似が得点のかぎを握ることになった。どちらの問題も解説してしまうとあっという間だが、生徒はかなり図形問題に精通していることを求められる。解説のような洗練された解法を丸暗記しても意味はない。泥臭く基本的な図形問題をしっかりこなし、かつ多面的に図形を見る視点を養うことが肝心である。特に【問題8】は通り一遍の相似の問題の解き方を知っているレベルでは太刀打ちできない。相似計算の意味するところをしっかり自分のものにするまで特訓しておく必要がある。【問題7】は7の倍数の判定法を注釈に載せ、最後の場合分けに利用するところが面白い。倍数の判定法を利用した論理問題で、これも生徒の試行錯誤力が問われる。

[問題解答・略式解説]
 以下には各問の試行錯誤度を3段階で示している。

【問題1】 解答は以下の通り

試行錯誤度 

赤線枠の「4」が突破口となる。続いて青線枠の二つの「4」を導く。

【問題2】 (ア)・・・4g (イ)・・・1g (ウ)・・・3g (エ)・・・2g (オ)・・・5g ・・・7g

試行錯誤度 

右の図のように等しい重さのものを置き換え、同じもは消すなどの処理をする。

(ア)1個が(イ)2個と(エ)1個を合わせたものと同じ重さになる。おもりがそれぞれ1g~5gになっていることを考えると、(イ)は1gか2gのどちらかに決まる。

場合分けの結果、(イ)が2gのときは矛盾が生じる。

(イ)が1gのとき、(ア)が4gか5gとなる場合を考えて解答を導く。

【問題3】 (ア)・・・8 (イ)・・・7

試行錯誤度 

並べられているカードから、あるカードが「~でなければならない」のように、初期条件をある程度しぼるだけで下の図のようになる。また、下図には座席に対してA~Dの記号をふり、カードには番号をつけた。
ここで解答を導く論理の一例を紹介する。
  1. Aの(3)かDの(2)が黒の2 ⇒ Aの(3)が黒の2のときは矛盾 ⇒ Dの(2)が黒の2とする。
  2. 白の8以上の数字がある場所は、Bの(4)(6)とDの(3)(6)の4ヶ所。つまり、Dの(3)は8以上かつDの(4)は9以下 ⇒ Dの(4)は黒の9,Dの(3)は白の8
  3. Bの(4)が9以上 ⇒ Bの(5)は黒の11 ⇒ Bの(6)は白の11,Dの(6)は白の10,Bの(4)は白の9
  4. Aの(5)(6)は6以上7以下 ⇒ それぞれ黒の6と黒の7
  5. Aの(2)(3)とCの(2)(3)(4)は次の通り
    (A(2),A(3),C(2),C(3),C(4))=(1,3,2,3,5),(2,3,1,3,5),(3,5,1,2,3)

【問題4】 89通り

試行錯誤度 

2倍にしたときに日に対応する数の最大値は12月30日の「1230」なので、もとの数は615以下でなければならない。2月は28日までとしているので、百の位が1の数は101~114の14通り。それ以外の百の位が2~6の数についてはそれぞれ15通りづつある。
よって、14+15×5=89

【問題5】 解答は以下の通り

試行錯誤度 


3枚目真ん中の列の中段 4=2+2
下段 5=1+4 ←2+3は使えない
右の列の下段 17=9+8
上段 15=6+9または7+8
左の列の中段、下段 11=3+8,4+7,5+6のどれかなどを手がかりにまとめる。

【問題6】 解答は以下の通り

試行錯誤度 


赤線枠の計算の答えが整数になるような場合を考え、このマスをすべて完成させられないことを導く。
その後、答えが分数(小数)になるものを考える。例えば1÷2,1÷3,1÷4など。

【問題7】 325416

試行錯誤度 

条件から次のことがわかる。
(1) 千の位は5 ←Dが5の倍数より
(2) 十万の位と一万の位の組み合わせは12、16、32、36のどれか ←Cが4の倍数より
(3) 一の位と百の位は偶数 ←Aが2の倍数、Eが6の倍数より
ところでこの数字は1、2、3、4、5、6を並べ替えるだけなので必ず3の倍数となる。つまりAは少なくとも6の倍数であり、Cは少なくとも12の倍数である。
以上の条件をまとめるとAの数字の候補が125436,125634,165234,165432,325416,325614,365214,365412の8通りにしぼられる。この中でFが7の倍数となるものは325416だけである。

【問題8】 13.5cm²

試行錯誤度 

QPC∽APBであり、相似比を1:pとする。
また、A、QからBCにおろした垂線の足をそれぞれD、Eとする。 
直角三角形ABDの内角は30度、60度、90度なので、AD=9÷2=4.5cm
よってQE=4.5÷p、BP=6×pとなり、求める面積は
BPQ=BP×QE÷2=6×p×4.5÷p÷2=13.5

【問題9】 A・・・2個 B・・・6個

試行錯誤度 

立方体A、Bいずれも1辺1cmであるので、問題の図を完成させるには下図のように8個の小さな立方体に分ける。そして、紙面奥の小さな立方体に反時計回りに(1)~(4)の番号をつける。同様に紙面手前には(5)~(8)の番号をつける。すると、まず(1)と(7)はAとなる。その後接している面が同じ色になることに気をつけて順に考えると、のこりはすべてBとなる。

【問題10】 順番とページ数 (C,D,A,B,E)=(18,20,23,17,22)

試行錯誤度 

順番は条件からある程度しぼると、CDABEかECABDに決まる。(ここで、一番多く読んだ人と少なく読んだ人の差が10ページ未満であることから、読んだページ数が1人でも26ページを超えるか、14ページを下回ると解答として正しくならないなどの条件を見つけておくと楽) ECABDはDの始まりのページが※1 77,83にて場合わけをして条件に合わないことを確認。 CDABEはAの始まりのページが※2 38,39,40,41,42付近が候補となる。その中から全員の読んだページ数がばらばらで、かつ読んだページ数の最大値と最小値の差が10未満であることを考えると、Aの読み始めのページは39のときが適する。
※1読み始めのページと読み終わりのページの和を「ページ和」として説明する。
順番をECABDと仮定すると、Dは最後なので必ず100ページを読むことになる。さらに、Dのページ和がCのページ和の3倍になっていることから、Dのページ和は3の倍数になる必要がある。さらにDの読み始めのページの1ページ前がBの読み終わりのページになるわけだが、それがAの読み始めのページの2倍であることからBの読み終わりのページは偶数になる必要がある。そこから考えられるDの読み始めのページの候補は、14ページ以上26ページ以下のページ数を読んでいて、ページ和が3の倍数になる奇数であり、77か83となる。
※2Dが14ページ以上26ページ以下のページ数を読むことは、Bの読み終わりのページが74~86の間になることを意味する。そしてAの読み始めのページはその2分の1なので37~43となる。
しかしながら、Aが最後に読んだ人より1ページ多いことを考慮するとBの始まりのページが74や86になることはない。(もう少し突っ込んで考えれば72や84もありえないことはすぐわかる。)つまり、Aの読み始めのページとして考えられるのは38,39,40,41,42付近だけである。

【問題11】 24cm²

試行錯誤度 

FからBCにおろした垂線の足をGとすると、DBE≡EGF、CFG∽CAB。
BG=4cmよりCB=8cm。FG=3cmよりAB=6cm。よって求める面積は
ABC=8×6÷2=24

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