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週刊こぐま通信
「知育を軽視する日本の幼児教育が危ない」

何を学習課題にするか KUNOメソッドの実践(4) 図形

第36号 2015/3/10(Tue)
こぐま会代表  久野 泰可
 前回のコラムでも書きましたように、幼児期の基礎教育を担っている者から見ると、小学校入学後の学習の中で、「図形教育」の内容が一番貧弱だと思わざるを得ません。それをひと言で言い表わせば、「知識としての図形教育」に矮小化されてしまっているということです。それぞれの図形が持っている特徴に着目させ、それを暗記させることが中心です。基本的な知識を持つことは必要ですが、その前にすべき大事なことがあります。図形の知識をたくさん持つ前に、「図形感覚」をどう育てるかを重視すべきです。幼児期の遊びの中には、図形的な遊びがたくさんあります。粘土・折り紙・つみ木・パズル・ブロック・・・こうした楽しい素材を使って図形感覚を育てることができるはずなのに、そうしたものは小学生になったとたん、教材として見向きもされていません。幼児期の子どもたちが夢中になって遊ぶ、こうした素材を有効に使えば、子どもの関心や理解の発達に見合った図形教育が可能になるのに、そこに目が向いていないのはどうしてなのでしょうか。やはり、教育を下から積み上げていく発想が希薄なのでしょうか。上から下へ降りていく発想しかないのでしょう。

私が、実践経験を踏まえてつくり上げた幼児期の図形教育は、粘土・折り紙・つみ木・パズルをふんだんに使った内容に仕上げています。それが子どもの興味をかきたて、そしてその経験が将来の図形教育に必要な「図形感覚」を育てると確信しているからです。では、その内容を紹介しましょう。

カリキュラムを作成する際に考えたことは、「平面図形」と「立体図形」を大まかに分け、その上で、「図形構成 - 図形分割」を中核に据えた授業内容にすべきだということです。

1. 平面基本図形の理解
2. 同図形発見
3. 図形模写
4. 平面図形構成
5. 平面図形分割
6. 基本立体の理解
7. 立体構成
8. 展開図
9. 対称図形
10. 重ね図形
11. 回転図形

こうした順序で課題を並べ、その中で、折り紙・粘土・つみ木・パズル等、子どもたちが遊びとしても使っている素材を教材として使いながら、将来の図形教育に備えます。そうした意味で、6領域の中では子どもたちが一番好きな学習領域といえます。各単元ごとに事物を使った試行錯誤の個別活動を重視しながら、最後はペーパーワークで理解を確認していくような方法を取っています。その中の一つである、立体認識に関する授業をご紹介しましょう。

図形2 「立体構成」
触索、言葉による説明、紙粘土での製作をとおして、立体物の特徴をつかむ。8個の立方体つみ木を使って見本と同じ形を構成し、立体構成の感覚を養う。

1. 秘密袋
右手と左手を両側から入れられる袋の中に、いくつかの立体物が入っている。触索をして見本と同じ形を取り出す。
2. 立体の特徴
球、立方体、直方体、円柱、円すい、三角すいなどの立体を比較して、どこが似ていてどこが違うかを説明する。
3. 円すいづくり
見本を見ながら、粘土で円柱や円すいを作る。

4. つみ木の構成
立方体のつみ木8個を使って、見本と同じ形を構成する。
a. 教師が作る様子を見て構成する。
b. できあがった見本を見て構成する。
c. 絵に描かれた見本を見て構成する。


いろいろな経験をさせながら、最後はペーパーを使って理解度を確認し、応用力を身につけていきます。こうした感覚の授業が小学校でも行われていけば、小学校算数の「図形」教育はもっともっと楽しいものになっていくはずです。知識としての図形教育から、感覚を育てる図形教育への転換は、幼児期の基礎教育に学ぶべきです。

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