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週刊こぐま通信
「知育を軽視する日本の幼児教育が危ない」

対話教育の大切さ

第24号 2014/9/9(Tue)
こぐま会代表  久野 泰可
 小学校以降の国語科は、「聞く力」「話す力」「読む力」「書く力」の4つの柱で学習内容が構成されています。昔から『読み・書き・そろばん』と言われるように、「読む力」と「書く力」が重視されがちですが、幼児期においては、まず「聞く力」と「話す力」の育成に力を注ぐべきです。「聞く力」は将来の読解力に、また、「話す力」は作文力につながっていきます。最近の子どもたちは、「コミュニケーション能力」に劣るとよく言われています。確かに、教室での子どもたちを見ていると、結論は言うけれど「なぜ?」に答えられない子が多いように思います。自分の気持ちや考えを言葉で表現する能力を、幼児期のうちからしっかりと身につけておかなければなりません。私たちが「対話教育」を指導方針の一つに掲げているのも、そうした理由によるものです。「対話教育」は幼児には難しいとよく言われます。自分の考えを筋道だって説明するのは、確かに小学校低学年の子どもたちにとっても難しい課題です。しかし、とぎれとぎれであっても子どもたちは、身ぶり手ぶりを交えて表現しようと努力します。その努力の過程が大事です。大人が要求するような完璧な説明ができないまでも、表現しようとするその姿勢を大事に見守ってあげることが必要です。

私たちが、日々の実践で「対話教育」を大事にしようとしているのは、次のような点においてです。

  1. 言語領域以外のどんな学習内容であっても、「言語化」の要素は取り込む
  2. 答えの根拠を言葉で説明できなくても、身振り手振りも表現の一つとして受け止める
  3. ある課題が解決しても、そのプロセスは、大人が想像する以上に子どもたちの考え方は多様である。だからこそ、考え方のプロセスを言語化させ、聞いてあげる必要がある
  4. 言語化によって子どもの考え方がわかれば、どのように援助すればよいのかといった、教師の指導法の参考にもなる。その意味で、対話するということは単に言葉による表現の練習ということだけでなく、子どもの思考レベルを我々指導者がしっかりつかみ、それを指導に生かすという側面もある
  5. 大人と子どもとの対話だけでなく、子ども同士の話し合いの経験を多く持たせることも大事である

入試対策の一環として行っている「行動観察」講座では、ものごとを相談して作り上げる経験をたくさん積んでいます。廃品制作であったり、紙芝居作りであったり、共同画であったり、4~5人1組で行うこの課題の中心は、「話し合う」「相談する」という点です。
最初の頃は、そうした相談ごとができない子どもたちも、たくさんの経験を積み重ねてくると、自分の意見を言うだけでなく、相手の意見も聞ける態度が身についてきます。それだけでなく、相手の意見と違った時も自分の意見を押し通すだけでなく、どこかで折り合いをつけようと努力し、グループ内での話し合いが続きます。時には、自分の意見と違う結論になっても、その結果を受け入れていくこともできるようになります。そうした変化を見てくると、子どもたちの成長には、目を見張るものがあります、自然成長に任せるだけでなく、意図的にこうした場をつくりながら、「話し合う」経験を積んでいくことが大事です。子どもの成長には時間がかかります。結果を早く求めようとせず、時間をかけて「話し合う」経験を積み重ねていくことが大事です。

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