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週刊こぐま通信
新聞連載コラム「幼児教育に新しい風を」

第9回「教科書づくり」
-具体的な目標を示す-

こぐま会代表  久野泰可
 幼児期の教育は、学習時期の「早さ」に重きを置く教育であってはならない。では、何をめざすべきか。それは、小学校以降の教科学習を支える基礎をしっかり身につけること以外にはありえない。

現在、日本では「保育所保育指針」や「幼稚園教育要領」に、望ましい幼児教育のあり方が示されている。しかし、その目標の一つ一つは漠然としていて、やるべき課題がはっきりしない。つまり、到達目標が明確でないのだ。

40年間に渡って幼児教育を実践する中で、私は子どもが何をどのように考え、解決していくかをつぶさに見てきた。この経験から、年齢ごとの到達目標を明確にした教育活動を行っている。

例えば、「図形教育」の土台になる「位置表象」では、年長児について15の目標を設けている。その中のいくつかを紹介しよう。

(1) 一列に8個積んだ積み木の中で、指示された積み木が上から何番目、下から何番目であるかを説明できる
(2) 自分、そして向かい合った人の右手・左手がわかる
(3) 交差点まで歩いていき、指示された方向に曲がることができる
(4) 5×5方眼上の一つの場所を、四つの違う言い方で説明できる
(5) 反対側からのものの見え方を、その場に行かずに正しく推理できる
(6) 方眼上を言葉の指示で移動できる
(7) 地図上を指示された通りに移動できる

こうした具体的な目標があれば、何を教えればいいかも見えてくる。このために、私は幼児にも「教科書」が必要だと考えている。教科書といっても、みんなが同じものを使う必要はないし、目標に至る方法はいろいろあっていい。必要なのは、到達目標を明確にすること。すべての子どもが学科教育へスムーズに入っていけるようにするため、幼児の教科書づくりにも取り組んでいきたい。

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