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週刊こぐま通信
新聞連載コラム「幼児教育に新しい風を」

第8回「考える力の育成」
-視点変え物事をとらえる-

こぐま会代表  久野泰可
 幼児の基礎教育について「未測量(具体的な数値で表さない量)」「位置表象」「数」「図形」「言語」という五つの学習領域を考えたことは既に書いた。数や図形、言語に関しては、これまでにも多くの人が独自の理論で実践してきたはずだ。しかし、私が今目指している「考える力」の教育は、こうした領域を跳び越え、新しい視点で教育を考えることだ。

学習領域はあくまで便宜的なもので、大切なのは、それらを貫く「考える力」を育てること。そのために、以下の10個の課題を考えた。

その課題とは、
(1) 物事の特徴をつかむ
(2) いくつかの物事を比較する
(3) ある観点に沿って物事を順序づける
(4) 全体と部分の関係を把握する
(5) 視点を変えて物事をとらえる
(6) 物事を相対化してとらえる
(7) 逆に考える
(8) ある物事をひとまとまりにして考える
(9) 規則性を発見する
(10) AとB、BとCの関係からAとCの関係を推理する

この10個の課題を、先ほど挙げた五つの領域の学習活動の中に取り入れている。中でも特に力を入れてきたのは「視点を変えて物事をとらえる」ことだ。

大きい順に見たら、小さい順にも見る。自分の方からやかんを見たら、反対側からも見てみる。分類活動なら、例えば用途別に仲間分けをしたら、材料別にも分けてみる。数のやりとりでは、何かをもらって増えた人だけでなく、あげて減った人についても数の多少を考える。

このようにいろいろな場面で「視点を変えて物事をとらえる」経験を積ませる。そうした経験こそが、物事を柔軟に考える力を養うことにつながる。「人の立場に立って考えなさい」と昔からよく言われるが、「物事を他人の視点からみることができる」という社会性の発達も、「考える力」を育てる大事な経験である。

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